「御社の最短記録は?」
人事ご担当者さまが集まる会合や、意見交換会などで苦笑いとともに情報交換される「入社した新入社員が最短どれくらいで離職したか?」という会話、皆様も交わしたことがおありではないでしょうか。
「入社一年もたたない間に…」というのはまったく珍しくもなく、正式配属した半年くらい、研修が終わった3ヶ月くらい、「入社式に来なかった」という入社したことになるのかどうか、というパターンまであります。
「いったいなぜ新入社員が離職するのか」その原因を把握し、早期離職を防ぐための取り組みをすすめていきましょう。
新入社員が早期に退職する原因
若年層の離職理由を調査するデータは多種ありますが、今回ご紹介するのは若年者の離職状況と離職後のキャリア形成~若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。
参考:https://www.jil.go.jp/institute/research/2017/documents/164.pdf
「初めての正社員勤務先」を離職した若者の特徴や勤務先の特徴、離職後のキャリア形成状況まで、詳しく調査したものです。
そのなかから「離職理由」を抜粋してご紹介します。
離職理由に大きな偏りがなく、上位5位のポイント差は10%以内です。
そして、注目したいのが「希望条件に合った仕事が見つかった」という理由での退職はいちばん高い大卒男子でも18.6%と、今までの条件と比較して、良い会社が見つかったから離職したという回答者は5人にひとりもいない、という点です。
「離職率は改善したいけれど、人事だけで休暇取得状況をコントロールするのは難しい…」
「残業時間は社員に任せているのに…」
「給与のベースアップやボーナス支給額についてすぐに対応できるわけじゃないし」
といった、条件面だけで離職するのではないことがわかります。
ここからはデータでお伝えできるお話ではなくなってしまうのですが、長年この業界で、若年離職者、特に入社して1年以内に離職を決めた方に対応してきてひとつの共通点を感じるようになりました。
それが「思っていたのとなんか違いました」という言葉。
「思っていた」のなかには、業務内容や職場の雰囲気、給与や休暇と言った条件面などがもろもろすべて含まれます。なかには「こんな商品・サービスを扱う会社だと思っていなかった」という最低限の企業研究すらできていなかった方も。
この傾向は、採用環境が改善され始めた2013年卒あたりの学生から、徐々に強まっている感覚があります。
採用環境が悪ければ、必死に企業研究・業界研究にいそしみ、面接を突破するためにその会社の業務や社風を調べて自己PRに織り込む工夫をします。その工夫をしなくても、エントリーシートで落ちることはなく、面接もスムーズに進んでいく…この環境が「おもっていたのとなんか違う」を引き起こしているのではないか、という気がしてなりません。
新入社員の早期離職を防ぐために今すぐできること
休日休暇や給与などの待遇改善は、もちろん長期的に離職率を下げることでしょう。しかし、マスコミ業界や外資系企業などの例を出すまでもなく、「休暇が取れない=離職率が高い」は完全に一致しません。
必要なのは、入社前の徹底的な情報開示!
「よいことは3割増して大きく、わるいことはできるだけ言わない」こんな方針で採用後方に取り組んではいないでしょうか。
多くの会社で、就業規則や雇用契約書をきちんと開示しないまま入社している、というケースさえ少なくありません。逆に言えば、「きちんと情報開示をしてくれる会社」に対しての信頼度は大きく上がります。
そして、自社の特徴と学生の要望を一致させましょう。わかりやすい例としては、「業務時間が長いことよりも、きちんと報酬の見返りがあることを期待したい」という学生に、「残業ゼロの取り組み」をPRしても意味がないということです。学生の要望に寄せるのではなく、あくまで「自社の特徴」を率直に伝えることで、それに良い反応をしてくれる求職者とのマッチングを目指しましょう。
まずは、入社して数年以内の若手社員に対して、率直にヒアリングしましょう。
- 入社してみてびっくりしたこと
- 意外に思ったこと
- 入社する前に知っておきたかったこと
特に、業務内容については詳細に伝えられるように工夫が必要です。
- 営業として一人で回れるようになるまでの期間は?
- 一人当たりどれくらいの顧客を担当することになるのか?
- 営業として身につけなければいけない知識はどういったものか?
- 顧客の年齢層や業種、お付き合いの頻度は?
- ほかの部署に異動する場合の基準は?
- 営業はクルマか公共交通機関か?
- 社内にいる時間と社外にいる時間はどちらが長いのか?
- 昼食はどこで、誰ととることが多いのか?
- 報告書や日報はどのような内容を書くのか?
具体的に「自分が働いている姿を想像できるような」ことについて、細かく伝えるように新卒採用広報担当全員が意識することが大切になります。
まとめ
離職率は会社によって大幅に数字が異なります。せっかく仕事ができるようになってきたのに…という入社3年目以内の離職率について、厚生労働省が毎年調査データを集計しています。学歴や業種、企業規模などで集計しているので、自社が平均的な数字かどうかを判断するのに役立ちます。まずは改善の余地があるか、確認からはじめてみましょう!
(参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html)