接遇用語としてのクッション言葉を身につけて、接遇スキルをアップさせよう!

ビジネスシーンでは、お客様や目上の方に対しても、何かの依頼や断りをしなければいけない場合があります。その時に使用されるのが「クッション言葉」です。

ここでは、接遇用語として用いられるクッション言葉の種類やメリットに加えて、実際に接遇シーンでクッション言葉を活かせるポイントをご紹介します。

クッション言葉とは

クッション言葉とはどのような言葉なのか、接客・接遇用語としてはどのような言葉があるのか、利用するメリットは何かをまずは解説いたします。

接客・接遇用語としてのクッション言葉

クッション言葉とは、相手に何か依頼や断りを入れるときに言葉の中に挟むことで柔らかい印象を与えられる、「クッション」の役割を果たす言葉です。

例えば、日常生活の中でも通行人に道を尋ねたいときにいきなり「駅に行くにはどうすれば良いですか?」ではなく「すみません、駅に行くにはどうすれば良いですか?」と声をかけますよね。この「すみません」にあたるのがクッション言葉で、実は日常的にも使用されている言葉なのです。この場合「すみません」のクッション言葉を入れることで、「足を止めてしまって、時間を借りてしまってすみませんが」という気持ちが込められ、相手に柔らかい印象で道を尋ねられるようになります。

ビジネスシーンや接客・接遇シーンでも、顧客や目上の人など、なかなか依頼や断りが入れられない相手に対しても、クッション言葉は不快感なく、スマートにこちらの要求や意見を伝えるために使用されています。

さらに、一般的なクッション言葉は「恐れ入りますが」「失礼ですが」「申し訳ございませんが」のほか、「僭越ながら」「かしこまりました」などがあります。これらの言葉を特に頻繁に耳にするシーンは接客・接遇シーンです。つまり、元々クッション言葉とは接客・接遇用語として使用されてきた言葉で、近年人間関係を円滑に進めるために、ビジネスシーンでも活用されるようになったのです。

特に接客・接遇シーンにおいては顧客や目上の人が何か間違いを犯していたとしても、失礼なく、不快感を与えないように依頼や断りを入れなければいけないのは日常茶飯事です。ビジネスシーンまで活用の幅を広げるようになったクッション言葉は、現在でも幅広いシーンの接客・接遇用語として活用されています。

クッション言葉のメリット

クッション言葉のメリットは、相手に柔らかい印象を与えることで、失礼や不快感なく依頼や断りができるようになることです。特に、接客や接遇シーンにおいては、お客様に対して何かお断りを入れなければいけない時にも、相手の立場を害したり、失礼にあたるようなふるまいをしたりしてはいけません。

やむを得ず、お客様に何かを依頼するときや、お客様の間違いを指摘するときでも、クッション言葉を使うことで、お客様の立場を害せず、失礼なく柔らかい印象で依頼やお断り、指摘ができるのです。さらに、相手も柔らかい印象で依頼や指摘を受けるため、こちらの要求を快く承諾してくれる確率が高くなります。

クッション言葉の使い方のポイント

① 「~して下さい」「~出来ません」等の依頼や断りの言葉を柔らかく伝える為に、お伝えしたいことの頭にクッション言葉をつけて使う

  • 失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?
  • あいにく、こちらは禁煙でございます。

② 依頼する際は、クッション言葉+疑問形で伝える

例:お客様にお待ち頂く場合

✕「少々お待ちください」

→このように言い切ると、相手の方が「どの位かかるのか?」等、疑問に思われていても質問しづらい印象を与えてしまい、一方的で不快だと感じる方もいます。

〇「恐れ入りますが、少々お待ち頂いてもよろしいでしょうか?」

→クッション言葉+疑問形でお伝えすることで、相手の方がこちらに疑問やご意見を発しやすい環境を作り、柔らかく丁寧な印象を与えることが出来ます。

よく使われるクッション言葉の例

良く使われるクッション言葉の例を、一般的なシーン別にご紹介します。

相手に何かを尋ねるとき

「失礼ですが」

  • 失礼ですが、以前お会いいたしましたか?
  • 失礼ですが、こちらのハンカチを落とされませんでしたか?

「よろしければ」

  • よろしければ、こちらのビニール袋に傘をお入れください。
  • よろしければ、私がお荷物をお預かりいたしましょうか。

「差し支えなければ」

  • 差し支えなければ、こちらにお名前をご記入いただいてもよろしいでしょうか?
  • 差し支えなければ、ぜひ弊社社員にも先生のお話を伺わせたいのですが、いかがでしょうか?

依頼をするとき

「すみませんが」

  • すみませんが、このバスは○○までは行きますか?
  • すみませんが、手持ちに細かいのがないので両替をお願いしてもよろしいでしょうか?

「恐れ入りますが」

  • 恐れ入りますが、もう一度おかけ直し頂いてもよろしいでしょうか?
  • 恐れ入りますが、時間をおいてもう一度アクセスして頂いてもよろしいでしょうか?

「お手数ですが」

  • お手数ですが、こちらにお電話番号をご記入頂いてもよろしいでしょうか?
  • お手数ですが、以前のファイルをもう一度送って頂いてもよろしいでしょうか?

断りを入れるとき

「あいにく」

  • あいにく、その日は都合がつきません。
  • あいにく、今日はこちらで失礼させていただきます。

「残念ですが」

  • 残念ですが、今回のご依頼は辞退させていただきます。
  • 残念ですが、貴社のご要望にお応えできません。

「申し訳ございませんが」

  • 申し訳ございませんが、こちらは弊社では取り扱いがございません。
  • 申し訳ございませんが、時間外での対応はできかねます。

電話応対でのクッション言葉

実はビジネスシーンで多くクッション言葉が活用されるのは電話応対です。電話応対におけるクッション言葉の活用方法をご紹介します。

取り次ぎ時

  • 「少々お待ち頂いてもよろしいでしょうか?」
  • 「お待たせをいたしました」

相手に何かを伺う時

  • 「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
  • 「失礼ですが、どちらの佐藤様でいらっしゃいますか?」

相手に何かを依頼するとき

  • 「恐れ入りますが、○○様がお戻りになったら✕✕まで折り返しお電話を頂いてもよろしいでしょうか?」
  • 「(相手がかけなおすときなど)お手数おかけいたしますが、よろしくお願いいたします」

こちらから何かを提案するとき

  • 「よろしければ、○○が戻り次第折り返しお電話いたしましょうか?」
  • 「差し支えなければ、私が伝言を承りますがいかがでしょうか?」

お客様対応(接遇)で活用できるクッション言葉

クッション言葉の中でも、特に接遇用語として活用できるクッション言葉を厳選し、シーン別にご紹介します。

同意や承諾をするとき

  • 「かしこまりました」
  • 「承知いたしました」

お客様に依頼やお願いをするとき

  • 「恐れ入りますが、(喫煙は所定の場所にてお願いできますでしょうか?)」
  • 「○○のところ大変申し訳ございませんが~(お楽しみのところ大変申し訳ございませんが、上映中はゲームの音声はお切り頂いてもよろしいでしょうか?)」

お客様に断りを入れるとき

  • 「本日は棚卸のため15時までの営業とさせていただきます。ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます」
  • 「あいにくご希望の日にちはすべて埋まっております、申し訳ございません」

また、接遇のプロである客室乗務員流のクッション言葉の使い方を解説したページもありますので、ぜひ参考にしてください。

「コミュニケーション上手になれる!CA流『クッション言葉の使い方』」

クッション言葉の注意点

クッション言葉は「必要以上に多用しないこと」に注意して使用しましょう。クッション言葉は、相手に柔らかい印象を与えられる言葉ですが、あくまでも相手に対してお願いやお断りをしなければいけないシーンにのみ有効です。必要以上にクッション言葉を多用したり、シーンに合っていないクッション言葉を使ってしまったりすると、逆にへりくだった印象になったり、相手が不快に思ったりしてしまう原因にもなります。

例えば、相手に何かを依頼するときに都度「申し訳ございませんがこちらにお名前をご記入の上ご入場頂いてもよろしいでしょうか?」「申し訳ございませんが折り返しお電話を頂いてもよろしいでしょうか?」など、本来ならお詫びのフレーズである「申し訳ございません」を多用するのは不適切です。この場合は「恐れ入りますが、こちらにお名前をご記入の上ご入場頂いてもよろしいでしょうか?」「お手数ですが、折り返しお電話を頂いてもよろしいでしょうか?」など、適切なシーンで適切なクッション言葉を使用するようにしましょう。

クッション言葉を接遇で生かすポイント

クッション言葉を使う際には、ただ相手にクッション言葉をつけて依頼や断りを入れるのではなく、表情や言葉の選び方を合わせれば、より接遇用語として活かせます。

フレーズに合わせて表情も変える

接遇シーンでクッション言葉を使う際には、お客様へ伝えたい内容に合わせて表情を変えると効果的です。例えば、依頼やお断りをするときには「恐れ入りますが、こちらでお履き物を脱いでいただいても宜しいでしょうか」と少し申し訳なさを込めた笑顔で依頼をすると効果的です。また、お客様が座っている場合には必ず腰をかがめて、お客様と同じ目線でクッション言葉とともに依頼やお断りをするようにしましょう。

フレーズ集を作って練習

クッション言葉にはそれぞれ特徴があり、接遇シーンに適したクッション言葉を選んで使用するとより効果的です。ただし、どのシーンでどのクッション言葉が適しているのか、とっさに出てこない、という人も少なくありません。まずは、「電話応対」「お客様にお断りをするとき」など、シーンに応じたクッション言葉のフレーズ集を作るのがおすすめです。フレーズ集としてまとめて手元に持っていたり、見やすい場所に張っておいたりすれば、いつでも適切なシーンごとのクッション言葉が確認できます。

さらに、正しいクッション言葉を接遇シーンによって使い分けができるように、繰り返し練習をしましょう。

まとめ:接遇用語を身につけて、おもてなし人材を目指そう

クッション言葉の種類や一般シーン・接遇シーンにおける使い方やメリットをご紹介しました。元々接遇用語から派生したクッション言葉は、大切なお客様に不快な思いをさせないようにという気持ちから生まれた、おもてなしの言葉とも言えます。相手の間違いをそのまま指摘せず、自分の間違いのように依頼できるクッション言葉は、まさに相手を思いやる日本人らしい美しい接遇用語です。クッション言葉や正しい言葉遣い・言い回しを身につけて、おもてなしのできる人材を目指しましょう。

接遇用語を正しく使ってワンランク上の接遇をしよう

2018.07.12

記事の監修者

接遇インストラクター:和佐野 百合香

大手航空会社の客室乗務員を経験し、現在は医療機関・接客サービス業を対象に接遇研修講師、OJTインストラクターとして新人・若手の育成、現場指導にて接遇スキルの定着支援に携わっている

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