マナーという言葉の意味とは?マナーの基本や使い方、類義語との違いについて

ビジネスマナー、社会人マナーなど日常的にも耳にする「マナー」という言葉。大切なことと分かっているとはいえ、具体的な意味が分からない人も多いのではないでしょうか。

ここでは、今一度押さえておきたいマナーの意味や使用例、ルールやエチケットなどの類義語との違いをご紹介します。社会人としてマナーをもう一度見直す前にぜひチェックしておきましょう。

「マナー」の意味

マナーについて何となく理解していても、正しい意味を説明できる人は社会人でも少なくなっています。マナーを身に着けるために大切な、マナーの正しい意味や使用例、語源を覚えておきましょう。

意味

最近は全て「マナー」とひと言で表現されることが多いようです。日本語では「礼儀作法」と言われます。礼儀にあたるのが「マナー」、作法にあたるのが「エチケット」です。「マナー・礼儀」とは社交上の心で人間関係や社会的な秩序を保つために、相手に対して自分が取るべき態度や配慮です。「エチケット・作法」とは社交上の言動や振る舞いなどの「所作」、社会の中で培われてきた「しきたり」などをさします。

「マナー・礼儀」と「エチケット・作法」が車の両輪のように整い、バランスよく発揮されてこそ相手とよりよい人間関係が築けるのです。

使用例

そもそもマナーがなぜ存在しているかというと、人間関係や社会的な秩序を正常に保つためです。そのため、「マナー」の一言だけでは、人間関係や社会全体の秩序を乱さないための立ち居振る舞い、という使われ方をします。

これが転じて、ある状態を正しい状態に保つために、またはあるものに関する人間関係を正常に取り計らうための礼儀作法、という使用方法もあります。例えば、ビジネス上での人間関係や秩序を正常に保つための礼儀作法は「ビジネスマナー」と呼ばれ、食事の席での人間関係や社会的な秩序を正常に保つための礼儀作法としては「テーブルマナー」と呼ばれます。

語源

マナーの語源はラテン語の「手」を意味する”manus”とも言われますが、英語の“manor”(マナ・荘園)と関係があるとも考えられています。

イギリスには「マナハウス(Manor House=荘園領主の館)」と呼ばれる集会所のような建物があり、地域の中心的な役割を果たしていました。それを建てた地主(Gentry)がGentleman(ジェントルマン=紳士)の語源となりました。地域の中心にあったマナハウスで、ジェントルマンによって示された博愛精神が、マナーの手本となったようです。

マナーの類義語との違い

マナーのほかにもルール、モラル、エチケットという類義語がありますよね。これらの類義語とマナーの違いをくわしく説明できる人はあまり多くないのではないでしょか。

次に、これら3つの類義語の意味を、マナーとの違いとともにご紹介します。マナーと類義語を正しく使い分けられると、社会人としてもスマートな対応ができるようになります。

「ルール」との違い

「ルール」とは、規則のことです。語源は英語の“”rule”です。法律などの広い範囲のものから、社内規則やゲームのルールなど、ある枠組みの中でのものまであります。マナーとの違いは、「ルール」は必ず守らなければいけないこと、「マナー」は社会生活を維持するための行動ですが、必ずしも守る必要はないことを指します。

ビジネスシーンで例に挙げると、「タイムカードを打刻してから業務に入る」「所定の場所以外で喫煙しない」がルール、「オフィスはゴミを散らかさず常に整理整頓する」がマナーに当たります。ほかにも、サッカーなら「フィールドでは手でボールを持たない」のがルール、「ロッカールームを使用後に整理整頓を行う」がマナーにあたります。ワールドカップで敗戦後、日本代表が立ち去ったあとの整理整頓されたロッカールームに対して「すばらしいマナーだ」と称賛されたのは記憶に新しいですよね。

参考記事:https://number.bunshun.jp/articles/-/831333

「モラル」との違い

「モラル」とは、道徳や倫理を指します。語源は英語の“moral”です。人の道に外れない、善の行動や態度を指します。モラルは国や風土などの環境、そして人それぞれの考え方によって変化するのが特徴です。一方でマナーは社会全体の共通認識です。モラルは主観的な考えであり、マナーは客観的な考えである違いもあります。

例に挙げると、「災害時、救援物資を分けずに独り占めする」や「電車の座席を荷物で独占する」などはモラルに反する行動に当たります。

「エチケット」との違い

「エチケット」とは、相手を不快にさせない言動や振る舞いのことです。フランス語の“etiquette”の語源は諸説あります。ルイ14世の時代、トイレのなかったベルサイユ宮殿では、庭で用を足す人が多く、その場所がわかるように注意書きが書かれた立て札のことを「エチケット」と呼んでいたようです。また他の説では、宮廷内に入る時に渡された身分を表すチケットのことだとされています。

いずれにしろ時代とともに、「エチケット」は宮廷での作法全般を指す言葉に変わっていきました。

マナーとエチケット、どちらも社会や人間関係を円滑に進めるためのものです。両者の違いとは、マナーは「相手を思いやる心」、「エチケットは「その心を表す“所作やルール”」です。

例えば、挨拶をする時、お辞儀の仕方はエチケット(作法)であり、相手の状況による配慮はマナー(礼儀)です。美しい角度でお辞儀をするのがエチケット(作法)ですが、相手の状況によっては、会釈や黙礼にするという配慮はマナー(礼儀)です。

また、食事中、ナイフやフォークの使い方はエチケット(作法)、食事中の配慮、例えば食事のペースを合わせる、会話を楽しむ、音を立てない、などはマナー(礼儀)です。

アメリカ人によく読まれている有名なマナーの本「Emily Post’s Etiquette」では、食卓におけるマナーは「Manners at the Table」、食べ方については「Etiquette of Eating」と、マナーとエチケットを明確に分けています。

著者であるポスト女史はこの本の中で、「マナー」と「エチケット」の違いについて、「エチケットは他者への思いやりに基づく行動の規範(Code)であり、よいマナーとは、この規範に則って生活しようとする人々の温かい心、善意の表れである」と解説しています。

「ホスピタリティ」との違い

マナー、エチケットに通じるものとして「ホスピタリティ(Hospitality)という言葉があります。語源はラテン語の「Hospes」で、そこから生まれた「Hospitalitas」は、「人をかばう」「その人の望むようにしてあげる」という意味です。その他にも「Host、Hostess(主人、女主人)」「Hospital(病院)」や「Hotel(ホテル)」などの言葉ができました。

日本では、おもてなしや接遇の意味で使われますが、「おもてなし」の語源は「ものをもって成し遂げる(もって成す)」「表裏なし」と言われています。誰に対しても、表裏のない心で接する、見えないところでも、相手のために成し遂げるという心づかいです。

「ビジネスマナー」との違い

ビジネスマナーは、ビジネス上で必要とされているマナーを指して使われる言葉です。

一般的な「マナー」が、社会全体の秩序や人間関係を保つための礼儀作法を指しているのに対して、社会全体の範囲をビジネスシーンに置き換えた礼儀作法が、ビジネスマナーと言えます。

具体的には、ビジネスシーンにおける配慮や、人間関係を円滑に進めるための礼儀作法として、新入社員が入社前や入社時にビジネスマナー研修として受講するメニューが複数あります。

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まとめ

マナーの意味や使い方、語源に加えて類義語との違いをご紹介しました。マナーを正しく使うには、まずはマナーの意味を正しく知ることが重要です。マナーの正しい意味とともに、類義語も正しく使い分けられれば、より社会人としてふさわしい行動がとれるようになります。人間関係を円滑にするためにも、学んだマナーを仕事や日常に活かしてみませんか?

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記事の監修者

マナー・コミュニケーション講師:陣内 ちはる

マナーをはじめ、スマイルトレーニング、アンガーマネジメント、マインドフルネスの研修講師を務める。女性向けの自分磨きスクールも主催するなど、個人のウェルビーイング、組織のコミュニケーションビルディングを目指し、多方面で活躍中。

・アンガーマネジメントコンサルタント™️
・マナー・コミュニーション講師
・マナー・プロトコール検定(文部科学省後援)準一級

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