接客サービス人材を目指すなら覚えておきたい接客の基本9つのポイントと接客7大用語

お取引先様やお客様など、大切な方を接客する機会もビジネスシーンでは多くあります。ところが、社会人になるまで接客の機会を持ったことがない、という方も少なくありません。

ここでは、表情や挨拶などの9つの接客の基本を始め、用語や心構えなど、社会人として身に着けておきたい接客の基本をご紹介します。接客に自信がない、という方はぜひ参考にしてくださいね。

接客の持つ2つの意味

接客とは、企業や店舗を訪れる「お客様」に対して行う接遇や応対を指します。お客様とは、企業や店舗を訪れる人だけでなく、広義では企業や店舗の商品を購入したり、サービスを利用したりするためにお金を支払う人も含まれます。

さらに、カフェやレストラン、ホテルなどを訪れるお客様に対しては、「接客」そのものを商品として提供し、お金を受け取ります。

以上を踏まえると、接客とは主に2つの意味を持っています。

  • お客様に対して企業や社会人としてふさわしい接遇や応対をすること
  • 対価を受け取るためのサービスとして、お客様に提供する接遇や応対のこと

覚えておきたい接客9つの基本

対価発生の有無によって接客の意味は異なってきますが、ビジネス上での接客において、お客様へ提供する接客の基本姿勢は全く同じです。

次に、社会人として覚えておくべき接客の9つの基本事項を見てみましょう。

1.表情

表情は人間の感情のバロメーターです。笑顔や元気な顔は相手に対して良い印象を与え、怒り顔や泣き顔、無表情は相手に不快感を与えます。接客では常に笑顔や明るい表情を心がけましょう。

2.挨拶

挨拶は日常生活でもビジネス上でも、基本中の基本と言えるマナーです。接客においては、「お客様とキャッチボールしやすい言葉」を選んで挨拶すると、印象が良くなります。「おはようございます」や「こんにちは」などの基本の挨拶+「本日はようこそいらっしゃいました」「お久しぶりです、またお会いできて嬉しいです」と、相手を気遣う言葉を添えると良いですね。

  • 「おはようございます」+「本日は宜しくお願いいたします」
  • 「こんにちは」+「お足元悪い中、お越しいただきありがとうございます」
  • 「本日はありがとうございました」+「またどうぞお越しください」

3.立ち居振る舞い

立つ・歩く・お辞儀から見る接客の基本的な立ち居振る舞いをご紹介します。

立つ

背筋を伸ばしてかかとは付けて、男性はつま先を25度ほど、女性は5度ほど広げて立ちます。背中の猫背や反り過ぎ、腕組みや壁や物に寄りかかって立つのはNGです。

歩く

背筋と膝を伸ばし、顎をひいて機敏に歩きます。バタバタ音を立てる、走る、肩を揺らして歩くのはNGです。

お辞儀

接客やビジネスにおけるお辞儀は会釈・敬礼・最敬礼の3種類があります。

  • 会釈は15度、接客中や軽い挨拶
  • 敬礼は30度、お客様をお迎えする時や最初の挨拶
  • 最敬礼は45度、最後の挨拶や感謝する時、謝罪する時

とお辞儀をするシーンによって使い分けましょう。

お辞儀は4拍のリズムで行います。1拍で頭を下げる、2拍で止める、3・4拍かけてゆっくり頭を上げます。

4.丁寧な動作

接客中はひとつひとつの動作も丁寧に行いましょう。手先に意識を向けると、丁寧な動作に繋がります。

  • ご案内をする時など、手で方向を示す時には手のひらをお客様の方向に向けて、指先を伸ばす。右をさす時は右、左をさす時は左と、腕と体が平行になるようにする。
  • 物を受け渡す時には必ず両手を添える。胸の高さで受け取り、渡す時は相手の方向に物を向けて渡します。どんなものでも「大切に」扱う意識を持つ。

5.言葉遣い

言葉遣いは社会人として適切な、丁寧語を使用します。接客時も焦らないように、日ごろから正しい尊敬語・謙譲語を確認し、敬語を使いこなせるようにしておきましょう。

地方出身などで「方言やなまりが気になってしまう」という方でも「ゆっくり、丁寧に、はっきりと」丁寧語で話せばOKです。

6.アイコンタクト

接客中に絶対にやってはいけないのが「目を反らす」「視線をずっと下に向ける」ことです。相手との目を合わす「アイコンタクト」は、相手へ話を聞いている意識の表れとなり、信頼関係を築く上でも有効です。

人と目を合わすのが苦手、という人は相手と離れている時には相手の額から鎖骨の間の「アイコンタクトゾーン」に意識を向けるようにしましょう。顔が近い時には、相手の目ではなく眉毛やまぶたを見るようにすれば大丈夫です。

話の節目、挨拶やお辞儀で顔を上げた時にアイコンタクトをすると、同意している意識を相手に伝えることができ、より好印象を与えられます。

7.身だしなみ

せっかく接客の対応が良くても、身だしなみが乱れていると悪い印象を与えてしまいます。スーツの着こなしや髪型、男性のひげや女性のメイク、爪は適度に整えられているかを必ず確認しましょう。

8.適切な距離

人間同士が違和感なくコミュニケーションを取れる距離を「パーソナルスペース」と呼びます。パーソナルスペースの考え方は国によって異なりますが、日本の場合75~120cmと言われています。近すぎると相手に威圧感や息苦しさを感じさせ、遠すぎると疎外感を感じさせてしまいます。接客時にはパーソナルスペースも意識し、ほどよい距離を保ちましょう。

9.ホスピタリティ

ホスピタリティ(英:hospitality)とは、人への「無償の」のおもてなしや思いやりを表します。ホスピタリティの語源はラテン語のhospics(保護)で、その後英語のhospital(病院)などに派生しました。

ホスピタリティの精神を意識してお客様へ接客すれば、お客様に良い印象を与えるだけでなく、「またここに来たい」と印象付けることもでき、店舗ならリピーターとして、企業なら末永いお付き合いができるお客様を作り出すことにも繋がります。

なお、ホスピタリティにはその場では見返りを期待しませんが、お客様に対して与えた優しさや思いやり、もてなしは巡り巡っていつか自分に何らかの形で返ってくる、という考えも含まれています。まさに因果応報、善因善果、他人に与えた恩はいつか自分にも返ってくるという日本古来の考え方にも通じているのです。

接客の7大用語とは

接客において頻繁に活用されるフレーズが「接客の7大用語」です。覚えておけば正しいシーンで適切なフレーズを使えるようになります。間違った使い方と共に解説します。

(1)いらっしゃいませ

お客様を迎える時のフレーズです。企業なら「おはようございます」「ようこそいらっしゃいました」と言い換えても問題ありません。

×「いらっしゃいませ~」と語尾を伸ばす、「どうも」「まいど」

(2)かしこまりました

お客様の要望や申し入れに対して同意する時や承諾する時に使うフレーズです。

×「分かりました」「了解しました」

(3)少々お待ちください

話の途中で退席する時や、お客様の要望や問いかけに対して少し時間がかかる時など、少しその場を離れる時に使うフレーズです。なお、少しその場を離れるだけでなく、かなりお客様をお待たせしてしまう時には、「お時間をいただいても宜しいでしょうか?」と伺うようにしましょう。

×「ちょっと待ってください」 (長く待たせるときの「少々お待ちください」もNG」

(4)(大変)お待たせいたしました

前述の「少々お待ちください」からお客様の元へ戻ってきた時に、お客様へ声かけするフレーズです。少しの時間でもお客様を待たせてしまった時はいきなり本題に入らず、「お待たせいたしました」と声をかけてから本題に入りましょう。

×お客様は長く待っていないのに「大変お待たせいたしました」と言うと、嫌みのように聞こえて悪印象。待たせてしまった時間によって「大変」を付けるか付けないかを判断する。

(5)恐れ入ります

こちらの都合をお客様へ提案する時や、お客様がそれを承諾してくださった時に使うフレーズです。「恐れ入りますが…」と提案に入る前のフレーズとして、またはお客様がこちらの提案を承諾してくださった時のありがとうございます、の代わりに使用します。

×「恐れ入りますが、宜しくお願いいたします」など、通常のクッション言葉として使うのはNG。

(6)ありがとうございます

接客の基本フレーズです。お客様が何か気をかけて下さった時にもすかさず「ありがとうございます」と言いましょう。

×「すみません」感謝を伝えるにはネガティブなフレーズ。言ってしまいがちなので気を付ける。

(7)申し訳ございません

お客様に迷惑や不便をかけた時に謝罪するフレーズです。

×「すみません」「ごめんなさい」

ビジネスが成功する確率も上がる、接客する時の3つの心構え

接客をする時、3つ心構えを忘れずにいればビジネスの成功にも繋がります。

  • お客様の先を見据えた行動をする
  • 全体への気配りを忘れない
  • 臨機応変に対応する

お客様の先を見据えた行動とは、お客様が何を求めているかを的確に予測し、先回りして配慮をすることです。

例:ある企業が条件付きで新規の取引先を決めかねている。

  • A社の接客は全く失礼がなかったが条件に対しては「○○は致しかねます、申し訳ありません」と普遍的なものだった。
  • B社の接客は条件に対して「○○は致しかねますが、××はいかがですか?」と代替案を出してくれた。

この場合、先回りして企業のニーズを把握して代替案を出したB社を取引先に選ぶのではないでしょうか。

ほかにも、接客と言うとどうしてもひとりのお客様に集中して対応しがちですが、複数でいらっしゃったお客様に対しては、お連れの方が何かを求めていたり、気にしていたりする場合があります。ひとりだけでなく全体を見て気配りができる視野の広さを持ちましょう。

最後に、接客は対機械ではなく対人間です。マニュアルはあれどひとりひとりに対して適切な接客方法は異なります。その場に応じて臨機応変に対応できるようにしましょう。

接客の基本を身につけるためには

ビジネス上での基本の接客ポイントについてご紹介しました。とはいえ、ひとりひとりで正解も異なる接客は奥深く、難しいものでもあります。企業の社員全体に接客能力を身につけたい時や、接客の復習をしたい時には、外部から接客・接遇の講師を招き研修を行なったり、外部で開催されているセミナーに参加すると体系立てて学ぶことができて効果的です。お客様に満足してもらえ、ビジネスチャンスにつながる接客能力を身に付けましょう。