外見が美しい人でも、話し出すと言葉遣いが悪く幻滅してしまった、という経験をしたことがありませんか。特に社内外の人と会話をする機会の多いビジネスシーンでは、言葉遣いの良し悪しでその人だけでなく、企業の印象も変えてしまいます。ここでは、ビジネスシーンでふさわしくない言葉遣いの例や、言葉遣いが悪い原因、対処法と教育法をご紹介します。
ビジネスにふさわしくない言葉遣いの例
ビジネスシーンにはふさわしくない言葉遣いを気づかないうちにしていると、悪い印象を与えてしまいます。ビジネスでは用いるべきではない言葉遣いは以下の4つです。
タメ口
ビジネスシーンでは基本的に「です・ます」の丁寧語を使います。例え自分より年下の人や、顧客で親しくなった人がいてもタメ口で話すのは厳禁です。仲の良い同僚なども、就業中は丁寧語で、終業後やプライベートではタメ口でと、メリハリをつけるようにしましょう。
例
- 〇 メールを先ほど送信しましたので、ご確認お願いします。
- ✕ メールさっき送っといたから、見といてね。
若者言葉
ビジネスシーンでは、ただ丁寧語を使っていれば良いのではありません。いわゆる若者言葉を使うのは厳禁です。丁寧語の口調にふさわしい言葉遣いにするようにしましょう。流行語や、のほう言葉、ら抜き言葉は使用を避けます。
例
- 〇 今日はとても良く晴れていますね。
- ✕ 今日は超晴れてますね。
- ○ 書類をお持ちしました。こちらでよろしいでしょうか。
- ✕ 書類のほうお持ちしました。これでよろしかったでしょうか。
方言
ビジネスシーンでは標準語を使うのが一般的です。方言は、同じ地域出身の上司や顧客に対しては、親近感を覚えてもらえるかもしれません。ところが、周囲の人が、その方言を理解していないと、場合によっては疎外感を感じてしまうこともあるでしょう。また、言葉を理解してもらえず、正しい意思の疎通が図れない可能性もあります。公の場では標準語で誰にでも通じるコミュニケーションを図り、私的な場では方言も交えて同郷の人と心を通わせる。このように上手な使い分けができると素敵ですね。
例
- 〇 そちらに片付けてくれませんか?
- ✕ そっちになおしとってくれんですか?
間違った言葉遣い
丁寧な言葉遣いを心がけていても、敬語の使い方を間違えてしまうと印象が悪くなります。特に間違えやすいのが尊敬語と謙譲語の混同です。「敬語が苦手」の理由はほとんどが尊敬語と謙譲語の使い分けが苦手だということでしょう。
例
- 〇 どうぞお召し上がりください。
- ✕ どうぞ頂いてください。
- 〇 受付でお聞きください。
- ✕ 受付で伺ってください。
言葉遣いが悪いのはなぜか
言葉遣いが悪くなる原因は、悪い言葉遣いをするだけでなく、内面的な要素も関係しています。言葉遣いが悪くなってしまう3つの原因を見てみましょう。
感情:イライラしている
言葉遣いは内面の感情を映す鏡でもあります。イライラしているときや、怒っているときには、つい語気が荒くなってしまう人も少なくありません。ビジネス上では自分を上手に抑えるのも重要です。感情的にならないようにするのも、言葉遣いの改善につながります。逆に、丁寧な言葉遣いを崩さないことで感情のコントロールができるという利点もあります。
勘違い:フレンドリーに話そうとしている
親しみやすく接しようと思って、年上の人にため口で話す、など勘違いで言葉遣いが悪くなっているパターンです。良かれと思っていても相手は不快に感じる恐れがあります。敬語は相手に敬意を示すためのものです。ビジネスシーンでは、親しさと馴れ馴れしさを混同しないようにしましょう。
知識不足:正しい敬語、丁寧な言葉遣いを知らない
そもそも、尊敬語、謙譲語、丁寧語などの敬語の使い方や、どうすれば丁寧に聞こえるかという知識がなければ言葉遣いが悪くなるのは当然です。それらは、型を覚えることと使うことで誰でも必ず上達します。敬語がいつまでも苦手なのは知らないことと使わないことです。型を覚えたら、間違えを恐れずにどんどん使いましょう。それが上達の秘訣です。
対処法 言葉遣いが悪いことのデメリットを伝えよう
言葉遣いが悪い人への対処法として、言葉遣いが悪いことで起きてしまうデメリットを伝え、本人に気付かせる方法があります。言葉遣いが悪いと起きる、主な3つのデメリットを見てみましょう。
誤解を生みやすい
言葉遣いが悪いと、粗野な人、乱暴な人、などの印象を与えてしまい、誤解が生まれやすくなります。例えば、本来とても優しく繊細、女性らしい気質を持った女性でも、言葉遣いが悪いだけで「おおざっぱ」「男まさり」との印象を与えてしまうことがあります。特に、ビジネスシーンでは誤解によって取引が上手くいかなくなったり、お客様に不快感を与えてしまったりする場合も少なくありません。
損をする
外見や態度、立ち居振る舞いが美しい人は、第一印象でも良い印象を与えられます。ところが、第一印象が良かったにも関わらず、口を開くと言葉遣いが悪くて幻滅してしまった、ということも。外見と合わせて、話し方や言葉遣いも第一印象を決める上では重要です。せっかく良い第一印象を与えられるだけの外見や態度を身につけているのに、言葉遣いが悪いだけで損をしてしまうのです。
周りの雰囲気にも影響が出る
悪い言葉遣いは、会話している相手だけでなく、周りの人にも悪い影響を与えてしまいます。例えば、上司の言葉遣いがとても悪いとそれだけで職場全体が圧迫されたような雰囲気になってしまいますよね。言葉遣いが悪いと、直接会話をしていない周りの人も不快な思いをする、職場や店舗全体の雰囲気が悪くなることにもなるのです。
教育法:言葉遣いが悪い人の教育方法
言葉遣いが悪い人はビジネスシーンでは多くの悪影響やデメリットがあると分かりました。次に、正しい言葉遣いにする主な5つの教育方法をご紹介します。
ビジネスマナー研修を受ける
ビジネスマナー研修には、言葉遣いや話し方に特化したテーマの研修もあります。プロの講師の力を借りて、効果的に正しい言葉遣いや話し方を身につけられるメリットのある方法です。また、特定の従業員を対象にするだけでなく、職場や店舗全体で従業員の言葉遣いや話し方を見直したい時にも有効です。
本やテキスト
ビジネスマナー研修で受講したテキストや正しい言葉遣いに関する本を活用する方法です。本は手元に置いていつでも読み返せるメリットがありますので、研修やほかの人から指導を受けるなど、ほかの方法とも併用できます。空いている時間を利用して言葉遣いのチェックもできます。
言葉遣いが丁寧な上司・同僚を教育担当に
言葉遣いが丁寧な上司や同僚など、周りの人を言葉遣いの教育担当にする方法です。言葉遣いがきれいな人が周りにいれば、すぐにでも実践可能な方法です。とはいえ、通常業務と言葉遣いの教育の併用は、一定の従業員に大きな負担がかかるデメリットもあります。教育の場を設けるのではなく、お手本として言葉遣いを参考にするように指導したり、ビジネスマナー研修と併用したりするのが効果的です。
実践して、繰り返しトレーニングする
正しい言葉遣いは知識として身につけるだけでなく、実際に使ってこそ効果を発揮します。ビジネスマナー研修や本、周りのお手本から身につけた正しい言葉遣いを、どんどん繰り返し使わせ、トレーニングさせましょう。繰り返し正しい言葉遣いを使わせることで、本人がより正しい言葉遣いを習得できるだけでなく、社内外の人に言葉遣いをほめられるなど成功体験にもつながりやすくなります。個人の印象アップは、もちろん組織の印象アップにもつながります。
言葉遣いやビジネスマナーを評価に入れる
正しい言葉遣いやビジネスマナーを身につけたことを評価要素に入れると、正しい言葉遣いとビジネスマナーの習得や向上を、本人の目に見える形で表せます。目に見える評価にすることで、本人の自信にもつながり、もっと正しい言葉遣いやビジネスマナーを身につける意欲も向上します。さらに、評価制度のすることで周りと競い合う姿勢も生まれ、職場や店舗全体での正しい言葉遣いやビジネスマナーの維持、向上につながります。
記事の監修者
マナー講師:陣内 ちはる
マナーをはじめ、スマイルトレーニング、アンガーマネジメント、マインドフルネスの研修講師を務める。女性向けの自分磨きスクールも主催するなど、個人のウェルビーイング、組織のコミュニケーションビルディングを目指し、多方面で活躍中。
・アンガーマネジメントコンサルタント™️
・マナー・コミュニーション講師
・マナー・プロトコール検定(文部科学省後援)準一級