接遇の意味や接客との違いは?接遇を身につけるためのポイントとメリットとは

接遇と接客は混同しがちな言葉ですが、それぞれの内容は異なるものです。

イメージとしては、接客はお客様に接してサービスするある意味では単純な技術、接遇はお客様の事情や気持ちにまで入り込んで寄り添うものというもの、とざっくりと大きく捉えておきましょう。

ですから接遇とは、お客様に寄り添いながらもてなす技術ということになります。「接遇」を身につけることは、接客の仕事に携わる販売員として大きなスキルアップにつながることなのです。

接遇とは

「接遇」とは、単純な「接客」から一歩踏み込んだ、お客様に寄り添い、心地よい時間と空間提供するお客様をもてなしながら接客をする技術のことです。

機械的・マニュアル的にどのお客様にも感じよく挨拶をするのが「接客」だとしたら、「接遇」は、一人一人のお客様の目線に姿勢を合わせて、お客様の心理に寄り添った表情や態度で挨拶をすることです。

お客様一人一人を大切にして、お客様にとって心地よく、快適な時間と空間を提供する技術、それが接遇なのです。よく言われる「接遇マナー」というのは、接遇のスキルや心を取り入れた接客の態度や表情、立ち居振る舞いのことをいいます。

接客との違いは?

接客と接遇の大きな違いは、お客様の状況や心理にまで入り込んで寄り添った対応をしているかどうか、という点です。

接客というのは、お客様に失礼がなく、不快を与えない程度に最低限のサービスを提供すること、接遇というのは、そこから一歩踏み込んでお客様に満足感と特別感を提供することです。

具体的に例えましょう。

レストランで、温かい料理を温かいうちに、美しい盛り付けを崩さずに速やかに提供するのが接客です。この際、お客様の元では「失礼いたします」「お待たせいたしました」くらいのお声かけはしますね。

接遇では、接客のレベルからさらに一歩踏み込んでにこやかに、目線を合わせてお声かけをすることや、料理の説明をする、お客様との会話を生み出す言葉がけをするなど、単純な食事の提供にとどまらず、満足度の高い食事の時間と空間の提供をすることです。

接遇のポイント

接遇のポイントは、「お客様の状況や心理まで踏み込んで寄り添うこと」です。

簡単にいうと、お客様の立場を思いやり、想像力を働かせてお客様の気持ちを先回りすることです。これを実現するためには基本となる接客のスキルは技術として当然に身につけておくことはもちろんですが、経験も必要です。技術+知識+経験によって接遇を実現することができます。

接客から一歩踏み込んだ「接遇」をするためには、まず大前提として最低限おさえるべき5つのポイントがあります。俗にいう「接遇5原則」「接客5原則」と言われるものです。お客様に高い信頼感と満足度を提供するためにはまずは接遇5原則を確実に身につけておく必要があります。

表情(笑顔)

目は口ほどにものをいうといいます。目元の表情を含め、親しみのある自然な笑顔はお客様の気持ちをほぐし、親近感と安心感を与えるものです。①視線を合わせる②口角をあげる(3分咲きの笑顔)③目にも表情をつけるこの3つがどんなお客様にも自然にできるような訓練が必要です。

身だしなみ

清潔感のある、きちんと整った身だしなみはお客様に安心感と信頼感を与えます。第一印象を決める大きな、かつ重要な要素です。業種にあった、きちんとした身だしなみを整えましょう。

身だしなみ=おしゃれではありません。おしゃれは自己満足のためにするもので、身だしなみとはその人自身の好みで左右されるものでなく、その場面にふさわしい装いをすることです。

挨拶

挨拶は人間関係の第一歩、とは日常生活であっても、接遇の場面でも変わりがありません。明るく、柔らかい声での挨拶は、相手の気持ちをほぐして距離を縮めることのできる魔法のような言葉です。挨拶で心がけけるべきポイントは以下のようにおさえておきます。

  • 「あ」・・・あかるく(明るくさわやかな挨拶をする)
  • 「い」・・・いつも(どんな状況でも挨拶は欠かさない)
  • 「さ」・・・先に(他人からではなく自発的に挨拶をする)
  • 「つ」・・・続ける(いい挨拶も続けなければ意味がない)

言葉遣い

お客様の年齢や性別、地位にふさわしい言葉遣いというものがあります。また、業種によっても言葉遣いは変わります。自分の役割として最もふさわしい言葉遣いをマスターしましょう。

若い女性がターゲットのアパレルブランドと、ハイブランドではお客様の年齢も、求めているものは全く異なります。また、初めてのお客様なのか、いつもご来店いただくお客様なのかによっても全く言葉遣いは異なります。

態度

いわゆる「立ち居振る舞い」です。お客様に圧迫感を感じさせない、心地の良い距離で、品よく振る舞うことがお客様に感じよさを提供することができます。接客においては、常にお客様に顔も体も正対し動作をする、これが基本中の基本です。

接遇を身につけるメリット

接客でなく、接遇を身につけることのメリットは数多くあります。

販売員やサービス業に従事する従業員が接遇を身につけることによって、質の高いサービスの提供が実現できます。お客様は質の高いサービスの提供を受けることができ、満足の高い買い物やサービスを受けることができます。販売員個人としても個人の販売成績もアップしますし、組織の売上への貢献度も高まります。組織としても高い販売力を誇る従業員が多く揃えることにより、お客様からの支持を得て売上や利益の確保につなげることができるのです。

このように、接遇を身につけることは、個人としても、組織としても、お客様にとっても三方すべてよしのWIN-WINの結果をもたらすことになります。

接遇の身につけ方

自分で学ぶ

接遇を自分で身につける方法はいくつかあります。

  1. 接遇に関する知識を仕入れる
  2. 接遇のノウハウを仕入れる
  3. 経験を積む

この3つをいつも自分で意識し続けていけば、自然と接遇のスキルが身についていきます。

接遇に関する知識面は、接遇に関する本や資料を読むことや、先輩にアドバイスをもらうことで理論として自分に定着させていきます。接遇のノウハウを仕入れるには、身近な先輩やこの人みたいになりたいという憧れの存在を手本として、その人のやり方を見て真似をし続けることです。最初は真似で構いません。続けるうちに、その意味や効果を自分の中に落とし込めるようになり、「自分のもの」として掴むことができるようになっていきます。

このようなことを続けていくうちに、仕入れた「知識」を土台として「経験」が積み重なっていき、自然とスキルアップにつながっていくのです。

指導する

自身が若手や新人の教育や育成にあたる場合であっても、基本的には「知識」の伝授、「やり方」の伝授、この2つが大きな柱となります。

教える側が心がけるべき大切なことは接遇と同じく、「相手の目線に合わせること」です。教わる側の知識や技量に合わせて教える内容やそのスピードを調整していきます。また理解度や習得度合いも人によって違いますから、焦らず根気よく、相手が頭で理解し、そして実践できるようになるまで温かく見守る姿勢が必要です。

研修で学ぶ

接遇に関する研修を受けることは、自身のスキルアップに大変効果的です。日ごろの自分の接遇を振り返り、得意なことは更なるレベルアップを目指し、不得手なことや知らなかったことに対しては振り返りと気づきを得ることができます。機会があれば積極的に参加するようにしましょう。研修のメリットはまだあります。同じ悩みや問題を抱えている人との情報交換や共有を通じて、新しい気づきや解決のヒントを得ることができますし、講師からの客観的かつ的確なアドバイスを得ることができるのです。

接遇用語を正しく使ってワンランク上の接遇をしよう

2018.07.12

まとめ:接遇を身につけるメリット

接遇を身につけることは、仕事上のメリットが多くあるだけでなく私生活においても「相手の気持ちを考える」「相手の気持ちを尊重する」ものの考え方が自然と身に付きます。相手が喜ぶことで自分もハッピーになる、そんな気持ちでお客様に接することが接遇の極意です。

接遇は、お客様への寄り添いです。神経を使うことではありますが、それ以上の喜びややりがいといった大きなメリットをえることができるものです。ですから、ただの接客から脱却した「接遇」はぜひ身につけてほしいですし、誇りをもってお客様をもてなしていきましょう。