新卒採用の盲点にもなり得る、中堅社員が意外と知らない最近の学生事情

「同じ大学の学生が面接に来ると、つい懐かしくなって母校の話をいろいろ聞いてしまう」
「OB訪問の時期が来ると、自分の就活を思い出す」
「基本的に、大学生の生活なんて今も昔も変わっていないと思う」

ついこの前卒業したばかりな気がする、という方も、大学時代のことなんてほとんど思い出さない、という方も、それぞれ「大学生とはこういうもの」というイメージがあるはずです。

しかし、平成が終わろうとする今、アラフォー世代の中堅社員が知らない「学生事情」がたくさんあります。

面接でのエピソードを聞きながら、「アレ?」と違和感をおぼえたことはありませんか?そんな、就活の面接エピソードに関係する1990年代までの大学生と、今の大学生との違いをご紹介します!

今の大学生は真面目です

理系学部生、院生は別として、文系学生は「いかに効率よく単位の取得しやすい授業を組んで、バイトやサークル活動に勤しむか」というものだ、というイメージをお持ちの方、いらっしゃるかと思います。

いま40歳以上の方なら、ご自身はそうでなかったとしても、友人知人に「代返」を頼まれたり、ノートのコピーを取るために試験前は大学前のコピー屋さんに走ったり…という経験をお持ちですよね。なかには、「大学の4年間は、とにかくたくさん友達を作って、バイトにスキーにクルマの免許取得に旅行に、とにかく忙しく活動するもので、単位は教授にお願いしてなんとかしてもらった!」という、あまり褒められた学生ではなかった方でも、今はバリバリと仕事をする中間管理職でいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、「いまの学生は免許も取らない、旅行もいかない、海外に興味ない、活動量がすくないのではないか?いろいろなことに興味が薄くて、行動的でない学生が多いのは問題だ!」と考えるのは早計です。

大学の仕組みや環境は、ここ20年間で大きく変化しているのです。

出欠管理システム

アラフォー世代の授業の出欠確認の方法と言えば、少人数の授業なら中高までと同じ点呼、大講義室なら出欠カード。大学や学部によっては、出欠はまったく取られなかったという授業がほとんどというケースもあったでしょう。

しかし、現在は国公立大学も含めて、ほとんどの大学で欠席がしにくい出欠管理システムを導入しています。

学生証がIC対応になっていて、授業時間に教授の持っている読み取り機にかざすパターン、机ひとつひとつに読み取り機がセットされていて、授業時間中はずっとICカードを載せておくパターン、タブレットで授業のアプリにアクセスし、双方向授業に参加させるパターンなど、「代返」はとても現実的ではありません。

出席状況が単位取得の要件に関わる点は変わっていないため、今の学生は昔と比べて「物理的に自由に動ける時間が減っている」ことをまず理解しましょう。

GPA評価制度

「GPAで、3.6を取得しました!」
「…へえ~??(なんか成績のこと?すごいかどうかもよくわからん…)」

ある日突然面接官に抜擢された中堅社員の方がよく面接で混乱するのが、GPA評価制度です。企業のなかには、成績証明書提出の代わりとして、エントリーシートの記入欄にGPA評価を記入させるなど、就職活動の現場でもすこしずつ導入されていますが、一般の認知度はまだまだ低い状態です。

GPA(Grade Point Average)評価制度とは、もともと欧米の大学が用いている成績指標です。授業の単位ごとの成績評価を、5段階(A・秀、B・優、C・良、D・可、E・不可)で評価し、それぞれに対して、4、3、2、1、0のように数値(グレード・ポイント:GP)を付与します。

欧米の大学では単位の取得数ではなく、この単位あたりの平均(グレード・ポイント・アベレージ:GPA)を出して、その一定水準を卒業等の要件とする制度となっています。

日本では2008年ごろから、全国の大学で GPA制度の導入が普及しはじめました。学部段階での導入率は年々上昇しています。

  • 2006年度:40%
  • 2008年度:46%
  • 2013年度:72%
  • 2015年度:85%

(文科省:平成25年度の大学における教育内容等の改革状況について より抜粋)

大学によっても異なりますが、一般的に2.0~2.7が平均的な数値です。

日本ではアメリカのように、「2.0を下回った場合退学勧告される」といった厳しい運用をしているケースは少ないのですが、この数字が例えばゼミの選抜試験、留学の合否判定、奨学金の給付認定などに利用される機会が増えています。

「大学の成績なんて関係ない!全部「可」でも、単位さえ取得できればいいんだ!」という環境ではありません。

奨学金の受給割合

奨学金制度は昔から大学生を支える大切な制度ですが、進学率の上昇に伴って、奨学金受給率が大幅に増えていることはご存知でしょうか。

景気に左右される奨学金受給割合は、リーマンショック後の2012年に最高の52.5%を記録しますが、直近の調査結果である2016年も48.9%と、ほぼ横ばいで推移しています。1998年ごろまでは、およそ20%前後の数字で推移してきたことを考えると、大幅な伸びとなっています。

奨学金を取得するためには、しっかりと成績の結果をだすことが要件になっているものもすくなくありません。学生は真面目に勉強に向き合わなければならないのです。

今の学生が、「おとなしい」のではありません

「私たちのときは、もっと活動的だったのに…」そんな違和感を感じていた方も、学生を取り巻く社会情勢や大学の環境の変化を知れば、学生を見る「視点」もかわってくるのではないでしょうか。

しっかりと、まじめに勉強に取り組む彼らを評価する手法を考えていくことが求められています。

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2018.11.29