学生の〇〇さんからお電話です、と内線を受けるたびにハラハラしなければならない時期が、入社日当日まで続くことが珍しくなくなっていますね。
「申し訳ありません、内定を辞退させていただきたくご連絡しました。」
「…よりによって君が…」
人間不信になりそうです、とため息をついておられる人事採用担当者様、内定辞退率改善のために考えるべきことは何か、整理したことはありますか?
学生が内定を辞退する理由
まずは「なぜ、学生は内定を辞退したのか」という根本的なお話についてです。
「いちおう、辞退理由は聞いていますが…」という人事の方も多いのではないかと思いますが、基本的に学生は正直に話しません。
「実家に帰らなくてはならなくなりました」
「院に進学・海外留学することにしました」
これらの理由が本当とは限りません。
学生は、「この理由であれば、人事が引き止めにくいor叱られずに済みそう」という理由をネットで拾います。強い拘束をかける企業だと思われていればいるほど、正直なことは言いません。
学生にヒアリングをしてその原因を探ろうとするのは、「無駄」な努力なのかもしれません。
大学のキャリアセンター職員の方に伺った「学生の本当の内定辞退理由」ですが、9割は「内定していたよりもよい(と学生が考える)会社に内定が出たから」です。のこりの1割が、上記の理由や「やりたいことが変わった」などでしょうか。
特に、経団連の就職協定解禁日まで、きちんと内定出しを控えていた企業が本命だった、という学生の場合、必ず「滑り止め」で内定をひとつキープしなければなりません。内定辞退が想定より多かった理由は単純です。
その会社が選考途中で第一志望ではなかったから。それだけの話になります。
内定辞退率改善手法を考える
「受ける人全員が、第一志望のわけはない」
そのうえで、辞退率改善手法を考えていきましょう。
学生全員に効果のある改善手法はない
「何を基準に第一志望を選定するか」は、学生によって意外と異なります。
先ほどのキャリアセンター職員の方も、「10年この仕事をしていますが、毎年、え?そんな理由が志望動機になるんだ…とびっくりすることがありますし、この2社だったらA社に行くと思ったのに…ということも珍しくありません」とお話されていました。
逆に言えば、その会社の何が「第一志望の理由」になるかは、わからないということです。
事例から考えてみよう
今回ご紹介するのは、ある企業の事例です。
事例を通して、自社を受ける学生ならどのように考えるか、検討してみてはいかがでしょうか?
首都圏に本社を構える食品の卸商社であるA社。一般消費者への認知は高くないものの、商材に輸入菓子などもあり、学生の応募数は毎年一定数あるが、最近は女子学生と男子学生のバランスが女子学生に大きく偏っているのが悩み。さらに近年大きな課題になっているのが、新しく立ち上げた流通事業部門の採用について。今までの事務・営業・企画系の採用と異なり、応募学生の質は低く、母集団も集まらない。そのため、総合職としてすべての部門に配属ありと募集要項を変えたところ、本業での選考辞退・内定辞退者が3倍に急増してしまった。さらに、新入社員のモチベーションの低下も現場から指摘されている。
【学生側から見た不安】
- 輸入のお菓子に携われる仕事、というキャッチコピーだったのに…説明会に来たら違うことを言われた
- 入社後の「自分の仕事」が具体的にどうなるのか入社するまでわからない。事務か企画ならどっちでもいいけど…。もし店舗に配属になったらどうしよう?
- いつか企画に行けるって言われたけど、結局いつなんだろう?
- 「やりたいことにチャレンジしてきましたか?」って面接で聞くくせに、配属について聞くと、「本人の適性を見て判断する」としか言わない。
- 新入社員のころは低くてもいいけれど、30歳過ぎの賃金がどうなるか気になる。でも、30歳平均賃金やボーナスなどの情報がほとんどない。というより、社内に30前後の人が少ないような気がする
A社は、大きな決断をしました。
新卒総合職採用ではなく、職種別採用を実施。ただし、応募者全員にインターンシップで1日ずつ営業・事務・企画・販売の4職種を現場で業務経験してもらい、さらに+1日、それぞれの適性に対してのフィードバックを行いました。
また、説明会の段階で社内の就業規則と給与テーブルを公開、社内のすべてのフロアに入室のうえ、希望者には若手OBではなく、部門で上司となる予定の社員と1時間面談機会を設けました。これを受け入れるため、選考機会は3年の夏、3年生の2月・3月、5月のゴールデンウィークあけ、8月夏休みと5回の山場を設けました。応募人数にばらつきはありましたが、短時間の面接では落としていた男子学生のよいところを見つけることができ、男女比の改善につながりました。
さらに、A社は「内々定」を出しませんでした。「10月1日まで、希望者はいつでも入社の意思を伝えていただいて大丈夫です。しっかり、満足いくまで就職活動してきてください。これでもう、終わってよし!という方から、内定受諾書を持参してください。辞退するときは、メールでお知らせいただくだけで大丈夫です!」
このスタイルで、A社の「内定後の辞退率」は劇的に改善されました。
まとめ
今回は、辞退率の改善、つまり「辞退率が高い」=「採用にとって悪いこと」という前提でご紹介しました。しかし、実は辞退率が高いことそのものは問題にならない、という事例もあります。新卒採用のための活動は「採用」のためだけのもの、とお考えにならない企業様もあるからです。「わが社にとってどんな手法が最適なのだろう?」とお悩みのご採用担当者様、ぜひお話を伺わせてください!