社会人基礎力が若手社員に必要な理由と社会人基礎力の身につけ方

社会人基礎力とは?

経済産業省が2006年から提唱し、大学教育に取り入れられた「社会人基礎力」。

「新入社員や若手社員にむけて、業務知識やノウハウではない、本質的な仕事力を向上させる研修を実施したい!」とお考えの経営者さま・教育担当者さまなら、いちどは自社の社員がきちんと身につけられているかチェックしたい、とお考えになったことがあるのではないでしょうか。

社会人基礎力は、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義されています。基礎学力・専門知識に加え、大学を卒業して社会に出る時点で身に着けるべき力として、人材の育成を支援するために開発された概念になります。

社会人基礎力は3つの能力(12の要素)から構成されています。

自ら行動し、考え、周りを巻き込んでいくとう3ステップを、12の能力要素に分け、それぞれを評価する仕組みです。面接の評価ポイントに導入する企業も少なくありません。

「前に踏み出す力」(アクション)

主体性…物事に進んで取り組む力

働きかけ力…他人に働きかけ巻き込む力

実行力…目的を設定し確実に行動する力

「考え抜く力」(シンキング)

課題発見力…現状を分析し目的や課題を明らかにする力

計画力…課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

想像力…新しい価値を生み出す力

「チームで働く力」(チームワーク)

発信力…自分の意見をわかりやすく伝える力

傾聴力…相手の意見を丁寧に聴く力

柔軟性…意見の違いや立場の違いを理解する力

状況把握力…自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力

規律性…社会のルールや人との約束を守る力

ストレスコントロール力…ストレスの発生源に対応する力

社会人基礎力が求められている理由

経済産業省から社会人基礎力が提唱されたのは2006年のことです。

その前年、2005年に、男子生徒の大学進学率が、はじめて50%をこえました。

その50年前、1955年の大学進学率は男子13.1%、男女ではわずか7.9%です。徐々にのび、1985年には男子38.6%、男女で26.0%になりました。2018年では男女計が、53.3%となっています。(文部科学省:学校基本調査より抜粋)

「大学」という環境が、選ばれた一部の優秀な人材だけが集まる場所から、徐々に一般化され、「大学に進学しない方が少数派」となりました。専門的な知識を学び、研究する場から、社会に必要とされる人材を輩出する場としての要請が強く求められるようになったことが背景にあります。

経済産業省では、大学と協同してプログラム開発を進めてきましたが、産業界からも歓迎され、新入社員・若手社員向けの研修コンテンツとしてもこの10年、大きく広がりを見せています。

社会人基礎力を身につけるためには

ひとつひとつの能力は、決して特殊なトレーニングや経験を要するものではありません。しかし、「誰でも自然に身につけられて当然」の能力でもありません。

社会人基礎力を身に着ける手法について、まとめた文章をご紹介します。

『人の成長においては、「現実を認識し、将来を見据える」中で、「目標を立て、実行し、内省する」、これを「さらに次の目標につなげ、成長のPDCAサイクルをまわしていく」ことが重要である。この際、目標を「言葉」にし、自ら意識することで「立ち戻って考える」ことができ、また、他者に共有することで「対話」が生まれ、「アドバイスやフィードバックを受ける」ことができる。このように「言葉」を通じて活動から得られる成長成果を最大化する。』(経済産業省 産業人材政策室:社会人基礎力を育成する授業30選」実践事例集より抜粋)

つまり、「自己評価」と「他者評価」という2つの軸が必要だということです。

従来のOn-JT(On the Job Training)では、この「評価」という点が不十分になりがちでした。

最終的には、「自分で課題に気づき、チャレンジする」という習慣を身に着けることを目標に、各企業の課題に応じた教育機会を設定しましょう。

教育研修・社会人基礎力向上の取り組み例

Off-JTによる社内研修

外部講師による評価・研修

次年度の採用を利用した研修

(採用担当や説明会の運営担当を通じて、自社への仕事理解やモチベーションアップを図る)

内定者の時点から教育をスタートする

教育者、指導者として管理職を育成する

評価の項目に取り入れる

社会人基礎力と合わせて新人・若手育成に必要なもの

社会人基礎力は、仕事に限らず、「地域社会で多様な人々と交流」するのにも必要な力です。逆に言えば、どんな業種・職種でも求められる「オールマイティ」な力であり、個々の仕事内容によっては、まったく違う能力が求められるケースもあるでしょう。企業によっては社会人基礎力の範囲をこえた能力開発に取り組まないといけません。

新人期間中に学ぶべきこと、研修内容の例

  • 会社の歴史
  • 現在の商品知識
  • 過去の商品概要
  • 社内規則
  • 経営層との接点
  • 顧客についての知識
  • 営業エリアについての知識
  • 書類作成、日本語作文能力の向上
  • ビジネスマナー
  • 人間関係構築

まとめ:まずは、現状把握が大切です

職務内容や採用手法によって、企業や職場ごとに「能力の片寄り」があることは珍しくありません。経営者さま、研修担当者さまもまた、同じ職場の一員です。そのため、片寄りがあることを客観的に把握するのが難しいケースもあります。12の能力のバランスを整えること、一部を強化すること、どちらがよいというわけではなく、職場ごとに応じて設計することが求められます。
まずは、新入社員や若手社員の現状把握、そして社会人基礎力研修教育導入の際は、会社の方向性とのすり合わせからはじめることをお勧めいたします。