「人材育成」とは?中堅・中小企業のための「人材育成」の基本と基礎知識

「従来であれば、現場に任せていたOJTだけで、自然と優秀な人材が何年かに一度は育ったものだけれど、最近はこれといった若手社員が出てこない」

「やっと最低限の仕事がこなせるようになったと思ったら辞めてしまってまたイチからやり直し」

こんなお悩みをもつ企業様にとって、「この研修プログラムを実施したら、社員全員がぐぐっと成長します!」という夢の人材育成があったら最高ですね。

大変残念ですが、もちろんそのような魔法は存在しません。

人材育成とは、文字通り人材を育成することになりますが、「なんのために人材育成に取り組むのか」をきちんと設定することがスタートラインになります。

人材育成の目的・目標

ニッチな分野で、その商品やサービスを扱える同業他社はなく、現状維持したまま最終的には自分が引退するときには会社も畳んでしまえばいい…こんな企業さまであれば、人材育成に取り組む必要はありません。

人材育成の目的は「企業が持続的に成長し続けること」にあります。

そのために必要な状況を、役割ごとに醸成するのが人材育成です。なにを目標にするかは、役割によって変わります。まずは、役割ごとに定めるべき目標から確認していきましょう。

新入社員

教育研修といえば新入社員に施すもの、とお考えの企業様も多いのですが、その理由は「新人に、業務遂行に当たって必要最低限の知識を身につけさせる」という比較的共通点の多い目標設定がされるからです。

名刺の渡し方や電話応対方法などのビジネスマナー、最低限のPCスキルなど、社会人として一般的に身に着けておきたい内容から、社内システムの利用方法や顧客名簿の扱い方など、知識として座学で提供しやすく、かつ成長実感が得やすい機会です。

中途入社社員

即戦力が期待される中途入社社員ですが、そのビジネススキルには幅があります。また、前職までの知識や経験を「活かしてほしい」場合と、「早く自社に慣れてほしい」という場合で、定めるべき目標が変わってきます。

中堅社員

次の管理職候補として、ゼネラリストとして新たな業務遂行のためになど、「新しいステップ」を踏み出すことを求められる中堅社員。業務がルーティーン化するなか、いかに社員自身に「目標設定」させるかが目標となるでしょう。

管理職

経営者に近い目線で、組織を管理・監督することが求められる管理職。会社の業務を遂行するだけでなく、経営者視点を持てるよう意識づけをすすめたいポジションです。

経営者

意外と忘れられがちなのが、経営者自身の成長機会の創出です。「企業が持続的に成長し続けること」に、経営者自身の成長が必要不可欠なことは言うまでもありません。

人材育成の手法

人材育成のための代表的な手法を確認しましょう。

OJT

OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)。先輩社員に指導を受けながら、通常業務上で実践するトレーニングを意味します。

研修のための時間や費用負担が軽く、実践的であることが最大のメリットです。一方、指導者によって効果にばらつきが出ること、指導者負担がかかるデメリットがあります。

Off-JT

Off-JT(オフ・ザ・ジョブトレーニング)。業務の実践ではない場面で行なうトレーニングを意味します。

均質的に、大人数に一斉に知識伝達ができることが最大のメリットです。デメリットとしては、業務外の時間と費用負担が挙げられます。

研修の種類と形式 OJTとOff-JTの違いとそれぞれのメリット・デメリット

2018.11.24

eラーニング

electronic learning(エレクトロニック・ラーニング)。インターネットなどの電子機器を利用した学習スタイルを意味します。

参加人数や場所、期間に制限がなく、研修の進捗管理や双方向コミュニケーションがとりやすいなどのメリットがあります。参加者のモチベーションが見えにくい点がデメリットです。

SD(自己啓発)

Self Development(セルフデベロップメント)。社員それぞれが自主的に取り組む知識や資格取得、能力開発に対して、講習費の補助や学習時間の融通、資格取得後に資格給で報いるなどの支援をするものです。

モチベーションの高い社員により高いレベルへのステップアップを促せるのに対し、あくまで自主性に任せなければならないのがデメリットなります。

人材育成のポイント

企業の人材育成の目的は、「「企業が持続的に成長し続けること」でした。

自社が持続的に成長するために、必要な人材とはどのような能力、価値観、行動特性、スキルを持った人間なのか。今の社員にキャッチアップさせるべき要素とは何か。ここから逆算して人材育成を考えることが大切です。

目的を明確に

「若手社員・中堅社員問わず、顧客とのトラブル発生件数が増えている。この原因を探り、改善することで顧客満足度を上げ、受注率を高めること」を目的とする研修と、「商品価格や工場納期の設定は営業に任せているが、経営的に問題のある契約も散見される。決裁権のある課長クラスに経営数字の見方を学んでもらいたい」ことを目的とする研修が同じ内容になることはありません。漠然と「社員の成長を目指すとよいらしい」ではなく、その研修の目的を明確にしましょう。

実践的なプログラムを組む

座学だけ、本を読むだけ、話を聞くだけ…取り組みやすく、安価に導入できる研修スタイルで成果を生むのは、よほどモチベーションの高い参加者だけに限られるのが現実です。

「自分で体や手や口を動かして実践する」ことと、「この研修は〇〇の仕事ですぐ実践できる」と感じられること、この2種類の「実践」があるかを確認しましょう。

よくある人材育成の課題

中堅・中小企業の人材育成で起こりがちな最大の課題は、「対症療法」と「継続性の低さ」にあります。

その原因の多くが、「研修のときはなるほどと思ったのですが、現場に出るとそうも言っていられなくて…」というものです。

現場社員の成長実感・仕事での役立ち感を感じることができなければ、結局成長にはつながりません。研修の内容を「本当に」経営者が日常業務で求めているのかきちんと浸透させることが何よりも大切です。